July 31, 2008

次の行動へと導く

「おぉ、開いた!」

先日、日光に行った時のことでした。
バス停の前にある大きな公衆トイレに入ろうとすると、トイレにしてはちょっと大げさではないかと思える程、大きく分厚い木の扉が目に入りました。
冬は寒さ厳しい日光ですので、恐らくその寒さ対策なのでしょう。
そんなことを考えながら扉を押すと、開かない。
引いても開かない。
もう一度押しても開かない。
(おかしいな)
そこで、取っ手を右手でつかんで横にスライドさせると、スルスルと開いたのです。
こんなことが起きたのは取っ手の形状を見て、咄嗟に(押して入るんだな)と思い込んだからですね。

デザインは、人にそれを見てどのように行動をするかを認識させることができる力があると言われます。
これをアフォーダンスと呼ぶそうです。
(「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力」より)
このアフォーダンス理論に基づくなら、どう見ても「押す」にしか見えなかった日光の公衆トイレの扉の取っ手は適切なデザインではなかったということになります。

PUSHそう言えば、日本の扉には「押す」「引く」という文字が書いてあることが多いのですが、欧米ではそういう表示を何故かあまり見かけません。
書いた方が親切と言えばそうかもしれませんが、次の行動を導くのにデザインで処理するのか、文字で規定するのかという、そもそも大きな考え方の違いがある気がします。

考え方の違いと言えば、水洗トイレ。
ヨーロッパでよく見かけたのですが、水を流そうと思ってもレバーがない。
良く見ると水タンクの天板の中央が、勾玉(まがたま)のような大きなボタンになっていて、押して欲しそうな雰囲気を醸し出している。
しかも、2つある勾玉(まがたま)のうち片方が少し大きい。
そこで思った訳です。
「あぁ、大きいボタンで”大”を流して、小さいボタンで”小”を流すのか」
そう、このトイレは無粋なレバーを付けて大とか小とか表示することなく、デザインで私に行動を起こさせた訳です。

そう言えば数年前、ある飲料メーカーのプレゼントキャンペーンで、オリジナルのCDラジカセをデザインしたことがありました。
操作盤の中央に、ボリュームコントロールのつまみを置くことが決定。
手のひらにすっぽり入る大きさの丸いダイヤルをレイアウトし、なかなかのデサインに仕上がったのです。
ところが製造工場から、(詳しくは覚えていませんが)回してボリュームコントロールする構造には出来ないと言われ、丸いダイヤルの上下を押してボリュームを上げ下げすることになりました。
しかし、この構造がとても違和感があるのです。
丸い飛び出たダイヤルを見ると、どうしても回したくなってしまう。
上下を押してボリュームコントロールなんて考えられない訳です。
結局、量産スケジュールとの兼ね合いもあり、「ダイヤルを回さないで下さい」と大きく書いたシールを貼って出荷することとなりました。
人間は、飛び出た丸いダイヤルを見ると、回したくなるようです。

デザインには、人をある特定の行動へと誘う力があります。
開けたくなるDM、クリックしたくなるブログパーツ、店頭で確かめたくなるTVCM。
生活者本位で考えれば、まだまだアイディアの組み込み方がありそうです。


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◆アイデアを生むヒント

コミュニケーションで最も大切なこと。
それは、ターゲットをどういう行動に導くか考えて設計することである。


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◆編集後記

Toiletteトイレに暖簾(のれん)。
なんか珍しいのでパチリ。
これも何かのアフォーダンスなのでしょうか?






bobtanaka at 23:00コメント(0)トラックバック(0)ツール   この記事をクリップ!

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Profile
ボブ田中
アイディア・クリエイター

■大手広告代理店勤務
■コミュニケーションの全ての領域にまたがるプランニングを担当
■2006カンヌ国際広告祭ダイレクト部門審査員
■2007アジア太平洋国際広告祭DM LOTUS部門審査員
■2009年より東北芸術工科大学教授に就任予定
■著書に「殿様ブランディング」日本実業出版社、「感動体験マーケティング」宣伝会議(共著)
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